コラム

2023.03.22 コラム 【くらしの中の経済学】インフレ?デフレ?

今回の内容について動画でも解説しております。併せてご覧ください。↓

 

【くらしの中の経済学】インフレとデフレのメリット・デメリット!どちらが良い?

 

最近物価が上がってる…

 

みなさんこんにちは。「くらしの中の経済学」、今日はインフレ、デフレについて考えてみたいと思います。

2022年12月の消費者物価が前年同月比で4%のプラス、2023年1月の消費者物価が前年同月比で4.2%のプラスとなり、消費者物価の上昇率としては、1981年以来41年ぶりの大きな値となりました。電気代・ガス代の高騰への対策として、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が開始され、2023年1月分から家庭の電気代は7円/kWh、ガス代は30円/㎥値引きされるようになりました。このように、物価の上昇についてのニュースを目にすることが最近多くなったのではないでしょうか。

物価の変動について、まずはデータをみてみましょう。以下の図1は、消費者物価指数(CPI、Consumer Price Index)の前年同月比での変化を見たものです。消費者物価指数のうち、変動が激しいと考えられる生鮮食品を除いた指数(コアCPI)がよく用いられますので、ここでもその値をみてみます。

図1 消費者物価指数の推移(前年同月比、%)

グラフを見てみますと、2021年の後半あたりから消費者物価が上昇傾向にあることが分かります。一方で、それ以前は2020年4月からずっと下落傾向にあったことも分かります。

では物価は下がって上がっただけなのでしょうか?図2をみてみましょう。

図2 2020年を100とした消費者物価指数の推移

図2は、2020年を100とした消費者物価指数の推移をみたものです。2022年の指数は102.1ですので、2020年と比べて約2%物価水準が高いことになります。ところが2019年の指数は100.2、2021年の指数は99.8となっていますので、物価上昇の傾向はごく直近に限られることも分かります。

長期的な趨勢を見てみますと、1990年前後は2から3%程度の物価指数の上昇が続いていましたが、その後の「失われた20年」は横ばいか下落基調にあったことも見てとれます。

日銀の政策目標、「物価安定の目標」では、この消費者物価の前年比上昇率2%が掲げられています。

インフレ、デフレの意味

 

ここで、インフレ、デフレの言葉の意味を整理しておきましょう。

「インフレ」は「インフレーション(inflation)」の略で、物価水準の継続的な上昇をいいます。逆に、物価水準の継続的な下落を「デフレ」、「デフレーション(deflation)」といいます。

個人レベルでは物価水準は上がるよりも下がる方がよいように思えますが、デフレには以下の特徴があります。

物価水準が下落することの裏を返せば、お金(貨幣)の価値が上がっていることを意味します。同じ1万円で買えるモノが増えるわけです。貨幣の価値が上がる、ということは、預貯金の実質的価値も上昇します。逆に、借金の実質的負担も上昇してしまいます。したがって、投資が控えられるようになってしまいます。デフレによって企業の売り上げが落ち込んでいれば、投資余力は小さくなっていますから、それに追い打ちをかけることになります。また、額面の給与が変わらなくても、実質的な賃金が上昇しますので、企業は雇用を抑制することになります。そのことがわれわれの消費活動を冷やすことにつながります。これらを通して経済活動が停滞していきます。

インフレの場合はその逆になります。貨幣の価値が下がっていきます。預貯金の実質的価値が下落しますので、投資活動を上手く行う必要がでてきます。また、借金の実質的負担も下落していきますので、将来に向けた投資が行いやすくなることでしょう。

デフレの脱却を目指す、というと「ハイパーインフレになったらどうするんだ」という意見がでます。たしかに急激な物価上昇が経済社会の混乱を招くおそれはありますが、ハイパーインフレ(hyperinflation)は、通常1カ月で50%(物価が1.5倍!)、1年で約13,000%(物価が130倍!)を超えるインフレ率の状態をいいます。そこまで極端なことは、戦争等の例外を除けば、日本で起きるとはあまり想像できませんよね。

物価指数の計算方法

 

では、物価が上がっているか否かを判定するための物価指数はどのように計算するのでしょうか。実際の指数の計算においては582(生鮮食品を除く場合は522)品目の情報を用いて計算されていますが(参考:総務省統計局)、エッセンスをつかむために、ここでは以下の表のような2品目のごく単純な数値例で考えてみましょう。

農産物 工業製品
価格 数量 価格 数量
2020年
(基準年)
¥100 40 ¥200 100
2022年
(比較年)
¥110 40 ¥250 60

農産物と工業製品の2種類を考えます。2020年には農産物が価格100円で40個消費され、工業製品が価格200円で100個消費されたとします。同様に、2022年には農産物が110円で40個、工業製品が250円で60個消費されたとします。

この場合、2022年(比較年)の物価水準は2020年(基準年)の物価水準に比べて上がっているのでしょうか?また、どれくらい上がっているのでしょうか?これらを判定するためには、どのように計算すればよいでしょうか?

答えは次回コラムでお話ししたいと思いますので、少し考えてみましょう。

くらしの中の経済学、今日はインフレ、デフレについてみてみました。またお目にかかりましょう。

 

 

執筆者:藤原徹

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