コラム

2023.01.19 コラム 【くらしの中の経済学】金利と株価、為替レート

今回の内容について動画でも解説しております。併せてご覧ください。↓

 

【くらしの中の経済学】激動の時代の始まり!?金利と資産価格について解説

みなさんこんにちは。「くらしの中の経済学」、今日は金利と株価、為替レートの関係について考えてみたいと思います。

2022/12/20のできごと

 

2022年12月20日に日銀(日本銀行)の金融政策決定会合の結果が公表されました。長期金利の変動幅の上限をこれまでの0.25%から0.50%に引き上げることになりました。これを実質的な利上げというふうに見る向きも少なくありません。

さて、このニュースが流れた途端に株式市場では激しい変化が起きました。株価が急激に下落して、日経平均株価は最終的には前日に比べて669.6円安い、26,568.03円にまで下落しました。

なぜ金利が上がると株価が下がるのでしょうか。

金利と割引現在価値

 

金利が1%の場合、100万円が1年後に101万円になります。2%であれば100万円が1年後に102万円になります。

ここから逆算すると、現時点での約99.01(=100/1.01)万円が1年後に100万円になることが分かります。つまり、1年後の100万円を現時点で評価すると、約99.01万円ということになります。これを「1年後の100万円の割引現在価値」といいます。

では、金利が2%のときはどうでしょうか。100万円が1年後に102万円になるわけですから、1年後の100万円の割引現在価値は、現時点で評価すると約98.04(=100/1.02)万円になります。

金利が1%から2%に上がることによって、1年後の100万円の割引現在価値はおよそ1万円程度下落することになります。

金利と株価

 

ところで、株式を持っているとどんな良いことがあるでしょうか?

・買った価格よりも高く売って儲ける(キャピタルゲインを得る)チャンスがある
・持ち続ければ配当を受け取る(インカムゲインを得る)権利がある

の2点あります。

配当の方に着目しますと、これは将来得られるものです。先ほどの割引現在価値の考え方を使いますと、将来入ってくる配当の割引現在価値は、金利の上昇に伴って下落するわけです。ということは、それを受け取る権利の対価である株価も下落するわけです。

もちろん株価は金利だけで決まるわけではありません。企業が保有する資産であったり、将来性であったり、コロナ等の社会情勢であったり、様々な要素が複雑に絡み合って決まります。

その一つの例として、この2022年12月20日に株価が急激に上昇したセクターがあります。何でしょうか?それは銀行セクターです。

金利が上がるということは銀行にとっては収益の改善に繋がるわけですから、株価は大幅に上昇しました。三菱UFJ銀行は前日比+6.0%、三井住友銀行は前日比+5.3%、みずほ銀行は前日比+4.0%といった具合です。

ちなみに、今回の長期金利の変動幅の上限変更を受けて、23年1月からの10年固定の住宅ローンの金利も上昇しました。

ここまで教科書的に綺麗に株価が動くというのは非常に珍しいケースだと考えられますので、ご紹介しました[1]

金利と為替レート

 

さらに同じ日の為替レートを見てみましょう。アメリカドルと円の交換レートが、1ドル137円台で推移していたところ、金融政策決定会合の結果発表の後急激に円高方向に動き、131円台にまで突入しました。数値が小さくなっているので、違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、1ドルで引き換えられる円が減っているので、「円高」ですね。

もちろん為替レートも金利の変化だけで決まるわけではなく、様々な要因が複雑に絡み合っているわけですが、日本の金利が上がるということは、日本円で運用すると利息がたくさん付くということを意味します。もちろん絶対的なレベルではアメリカの方が金利は高いわけですが、今までよりも相対的に日本の金利が高くなったので、円を買い(ドルを売る)動きが急に激しくなり、円高が起きたと考えられます。

くらしの中の経済学、今日は金利と株価、為替レートの関係についてお話しました。またお目にかかりましょう。

[1] 念のため申し添えますが、ここでは経済理論の簡単なご紹介を目的としているので、投資の勧誘や売買の推奨等を目的としていません。最終的な投資決定はご自身の判断でお願いいたします。

 

 

執筆者:藤原徹

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