コラム

2023.02.15 コラム 土地は自由に使えない!日本の土地利用規制 その1

今回の内容について動画でも解説しております。併せてご覧ください。↓

 

土地は自由に使えない!日本の土地利用規制 その1

 

買ったものは自由に使えるはず!?

 

みなさんこんにちは。今回は日本の土地利用規制についてみてみたいと思います。

ペットボトルのお茶をコンビニで買うことはよくあると思うのですが、もし、「そのペットボトルのお茶、半分しか飲んだらだめだよ!」と言われたらどう思いますか?特に、国、政府に言われたらどう思いますか?

あり得ない話ですよね。基本的に自分がお金を出して買ったものは、自分で自由に使っていいはずです。

ところが、土地についてはそれが成り立ちません。何千万、何億と出して買ったとしても、その土地の広さの半分しか建物を建ててはいけない(後ほど触れますが、建蔽率(けんぺいりつ)が50%に制限されている、といいます)、というのは決して珍しい事ではないのです。

買った土地なのに自由に使えないことの法的な根拠、つまり土地利用規制の法的な根拠は、建築基準法と都市計画法にあります。

規制については大きく分類して三つ、開発規制、用途規制、形態規制に分けることができます。それぞれ詳しくみていきましょう。

開発規制

 

まず開発規制についてみてみたいと思います。

そもそも開発って何だろうか?ということですが、都市計画法では、「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更」を開発行為と定義しています(都市計画法第4条第12項)。いわゆる土地の造成などが該当します[1]。特定工作物の例としては、ゴルフ場などがあります。

この開発行為は、自由にやってはいけないケースが多々あります。まず、開発しても良い地域と開発は基本的に駄目な地域というように、街が区分けされています。都市計画区域が、市街化区域と市街化調整区域に分けられます(どちらでもない場合は、「非線引き区域」といいます)。

「市街化区域」とは、「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的に市街化を図るべき区域」です。これに対して「市街化調整区域」とは、「市街化を抑制すべき区域」です。

では、市街化区域であれば自由に土地の開発をしていいのだろうかというと、必ずしもそうではなくて、開発には許可が必要になってきます。これを「開発許可制度」といいます。開発許可制度がないと、勝手に開発をしてよい、ということになり、市街化区域および市街化調整区域が絵に描いた餅になりかねませんから、この区域区分制度を担保するために必要となります。また、良好かつ安全な市街地の形成と無秩序な市街化の防止を目的としています。

市街化区域においては、開発許可が必要なのは、1,000平方メートル以上の開発行為に限られます。細かい開発行為まで都道府県知事の許可が必要だと行政コストがかかりすぎますから、大規模な開発に限るのは、合理的なように思えます。ところが、皮肉なことに、1,000平方メートルに満たない開発行為は許可が不要となれば、許可申請のコスト面から、ミニ開発を助長してしまう効果があるのではないか、という指摘がされています。

用途規制

 

土地の開発そのものにルールがあるのに加え、使い道についてもルールがあります。これを用途規制といいます。日本では、地域地区制度が設けられています。これは、住宅、商業、工業といった「用途の適正な配分、都市の再生の拠点整備、良好な景観の形成等の目的に応じた土地利用を実現するために設定する地域又は地区」のことをいいます。代表例は用途地域ですが、他にも、防火地域、高度地区、風致地区等々が定められています。

用途地域については、日本では13種類が定められています。住居系については、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域というように定められています。田園住居地域は2018年に新たに設けられた用途地域ですが、2022年末現在で、指定された実績はありません。


出典:国土交通省都市計画局 Webサイト

商業系工業系の用途地域は、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域というように分けられています。


出典:国土交通省都市計画局 Webサイト

ポイントは、住居地域には工場は建てられないのですが、逆に工業専用地域を除いた商業系工業系の用途地域には住宅が建てられるという点です。つまり本来であれば住宅地、商業地、工業地と分けたいところ、用途の混在が許されている地域が多く、規制が緩いという特徴があります。この原因の一つに、用途地域の規制を導入した際に既に街ができていて用途が混在しており、現状を追認する必要があったということが挙げられます。

用途地域の特徴としてもう一つ挙げられるのは、「これを建ててはダメです」といった形の禁止用途を列挙する形になっていることです。この方式ですと、新しい用途が出てきたときの対応が難しくなります。

自治体によっては、用途地域をWeb地図で公開しています[2]。興味のある方はぜひご覧になってください。

長くなりましたので、今回はここまでとします。次回は土地利用規制のうち、形態規制についてみてみましょう。

[1]分かりやすい説明は、福岡市のWebサイト等があります。
[2]東京都の例;東京都都市整備局

 

 

執筆者:藤原徹

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