コラム

2023.03.24 コラム 【くらしの中の経済学】インフレ?どう測る?

今回の内容について動画でも解説しております。併せてご覧ください。↓

 

【くらしの中の経済学】インフレ?どう測る?

 

物価指数の計算方法

 

みなさんこんにちは。「くらしの中の経済学」、今日は物価指数の計算方法について考えてみたいと思います。
 
前回コラムでは、インフレ、デフレの意味と、日本の物価水準の推移について簡単にみてみました。物価水準が継続的に上昇しているとインフレ、継続的に下落しているとデフレ、というのでした。消費者物価指数でみてみますとこの1年ほどは物価水準が上昇傾向にあることもわかりました。
 
前回の最後に、以下のような数値例をお示しして、物価水準が上がっているかどうか、どれくらい上がっているのか、どのように計算したらよいでしょうか?とみなさんにお尋ねしました。どのような結果になりましたでしょうか?
 

農産物 工業製品
価格 数量 価格 数量
2020年
(基準年)
¥100 40 ¥200 100
2022年
(比較年)
¥110 40 ¥250 60

 
 

消費者物価指数の計算方法

 

一つ目の考え方として、基準年(2020年)と同じ消費を比較年(2022年)に行おうとすると、いったいいくら(余分に)必要なのだろうか?という観点から計算する方法があります。つまり、基準年の数量を用いて価格の変化を見るわけです。この方法で計算した指数をラスパイレス指数といいます。消費者物価指数はこのラスパイレス指数の典型例です。
 
では早速計算してみましょう。
 

 
 
まず、基準年2020年の生活費は
 

100×40+200×100=24,000

 
となります。
 

 
 
これに対して、比較年2022年の生活費は
 

110×40+250×100=29,400

 
となります。
 
このとき、消費者物価指数は
 

100×29,400/24,000=122.5

 
となります。つまり基準年2020年に比べて22.5%の物価水準の上昇ということになります。現実の世界で物価水準が22.5%も上昇すると経済社会は大きく混乱しそうですが、あくまでも数値例です。
 
 

GDPデフレーター

 

消費者物価指数は、基準年の数量を利用するラスパイレス指数でしたが、もう一つ代表的な指数として、比較年の数量を利用する指数があります。こちらはパーシェ指数といい、GDPデフレーターが代表例です。せっかくですので、ここでご紹介します。
 
GDPデフレーターは、名目GDPを実質GDPで割って求めます。指数化するために100をかけた数値をここでは用います。
 
まず比較年2022年の名目GDPを求めましょう。先ほどまでの表の「数量」を「産出量」に読み替えます。
 

 
 

110×40+250×60=19,400

 
となるので、名目GDPは19,400です。数量は比較年2022年の値を用いることに注意してください。同じ産出量を基準年2020年の価格で評価したものが実質GDPになりますから、
 

 
 

100×40+200×60=16,000

 
と求めることができます。
 
したがってGDPデフレーターを指数化すると
 

100×19,400/16,000=121.25

 
となります。同じ生産活動を行った結果、2020年の価格では16,000のGDP、2022年の価格では19,400のGDPと評価されるわけですから、物価水準が約21.3%上昇していることが分かります。
 
同じ数値例でも物価上昇率が微妙に違う値で求まりますね。詳細は省略しますが、ラスパイレス指数は大きめに、パーシェ指数は小さめに出ることが知られています。計算の裏側を知ってデータを眺めると、また違った景色が見えてくるかもしれません。
 
 
くらしの中の経済学、今日は物価指数の計算方法についてみてみました。またお目にかかりましょう。

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