コラム

2023.04.17 コラム この土地一体いくら?日本の地価の決まり方

今回の内容について動画でも解説しております。併せてご覧ください。↓

 

この土地一体いくら?日本の地価の決まり方

 

2023年の公示地価

 

みなさんこんにちは。今日は日本の地価の決まり方についてお話したいと思います。

2023年3月22日に公示地価が公表されました。公示地価は1月1日時点の地価を表しています。下表に示す通り、住宅地や商業地といった全用途の全国平均で見て、前年比1.6%の上昇でした。2年連続の上昇で、上げ幅も拡大しています。

表 2023年の公示地価前年比上昇率(%)

()内は前年の値

出所:国土交通省

三大都市圏では大阪圏の商業地が3年ぶりに上昇に転じました。それ以外は全国・全用途平均と同じく、2年連続の上昇で上昇率も拡大しています。

札幌、仙台、広島、福岡の各地域の拠点となる都市では、10年連続で地価が上昇しています。また、前年に比べて上昇率が拡大しています。

その他の地方圏では、全用途平均、商業地が3年ぶりに、住宅地がなんと28年ぶりに上昇に転じました。

以下に示すように、コロナ渦の前は地価が上昇傾向にありましたので、再び持ち直しつつある、という感じでしょうか。

図 公示地価前年比上昇率の推移(全国・全用途平均%)

グラフは、全国・全用途平均の公示地価の前年比上昇率の推移を表しています。1975年は地価が下落していますが、これは実は特殊例で、それ以前はずっと地価は上昇傾向にありました。地価公示が始まったのは1970年からですが、一般財団法人日本不動産研究所が公表している『市街地価格指数』によれば少なくとも1955年以降地価上昇率がマイナスになったのは1975年が初めてです。

1990年代初頭のいわゆるバブル崩壊後、公示地価は下落し続けました。2008年のリーマンショックの直前は、地価は上昇傾向にありましたが、リーマンショック後再び下落基調に転じ、また上昇傾向にあったものがコロナ渦で下落し、再び持ち直してきた、という経緯をたどっています。

 

一物四価

 

ところで、日本で最も高い地点の地価は一体いくらでしょうか?公示地価で見てみますと、東京都中央区銀座4丁目5-6の調査地点です。。ここは、1平方メートル、つまり1メートル1メートルの正方形の広さでなんと5,380万円です。この地点は商業地域ですが、住宅地として最も高いのは、東京都港区赤坂1-14-11の調査地点で、1平方メートルあたり512万円となっています。

ここで注意したいのは、公示地価は、実際に取引された価格ではない、という点です。

公示地価は、地価公示法に基づいて、1月1日現在の標準地(2023年の場合26,000地点)の正常な価格を国土交通省土地鑑定委員会が公示するものです。

土地の取引は頻繁に発生するものではないので、地価公示によって一般の土地の取引に対して指標を与えることがその役割の一つです。また、不動産鑑定の規準となること、公共事業用地の取得価格算定の規準となることなども意図しています(参考:国土交通省Webサイト)。

都道府県が行う地価調査は地価公示の補完的な役割を担っています。地価調査の結果は基準地価格として公表されます。こちらは7月1日現在の基準地(2022年の場合21,444地点)の価格です。国土利用計画法施行令第9条に基づいて行われ、土地取引規制に際しての価格審査の規準や地方公共団体等による買収価格の算定の規準となることによって、適正な地価の形成を図ることを目的としています(参考:国土交通省Webサイト)。

公示地価・基準地価格は実際に取引が行われなくても公表されます。ということは、同じ土地であっても、実際に取引される時価(実勢価格)と公示地価・基準地価格の2種類の価格が存在することになります。さらに、以下にご紹介する相続税路線価、固定資産税路線価と併せて4種類の価格が存在するので、「一物四価」と言われたりします(同じ財・サービスが同じ価格で取引される場合の「一物一価」と対比しています)。

相続税路線価は、国税庁が管轄しています。「路線」という名がついているとおり、道路ごとの評価です。その道路に面している土地の相続税・贈与税の計算における時価を算定するのに用いられます。公示地価と同様、1月1日時点での評価です。公示地価のおおよそ8割の水準であるといわれています。

2022年の評価において路線価が最も高いのは、東京都中央区銀座5丁目の銀座中央通りで、1平方メートルあたり4,224万円です。先ほどの公示地価の最も高い地点の路線価も同額です。確かにおおよそ8割の価格ですね。

土地を所有していると、通常は固定資産税を支払う必要があります。その評価の際に用いるのが、固定資産税路線価です。こちらは市町村が管轄しています。路線価の評価は3年に1度となっています。水準としては公示地価の7割程度といわれています。ちなみに、相続税の最高路線価と同じ地点の固定資産税路線価は2022年の評価において4,010万円になっています。

Web地図上でみる地価

 

今日では、Web上の地図で地価が公開されるようになっています。国土交通省が提供している「土地総合情報システム」では、アンケート調査に基づいた実際の取引価格、公示地価・基準地価格が見られます。公示地価については、不動産鑑定士による鑑定評価書も閲覧できるようになっています。

一般財団法人資産評価システム研究センターでは、「全国地価マップ」が作成されており、
公示地価・基準地価格に加えて、相続税路線価、固定資産税路線価を見ることができるようになっています。ご興味のある方はぜひご覧になってください。

今日は、日本の地価の決まり方についてお話しました。またお目にかかりましょう。

 

 

執筆者:藤原徹

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