コラム

2022.11.28 コラム どうなる?どうする?日本の空き家その1

今回の内容について動画でも開設しております。併せてご覧ください。↓

 

どうなる?どうする?日本の空き家その1

 

空き家が増加し続けているとか、管理がされていない空き家によって様々なトラブルが発生しているとか、空き家に関する問題を見聞きすることが増えてきた方も多いかと思います。

 

空き家の現状と課題について、今回と次回の2回にかけて見ていきたいと思います。

 

空き家はなぜ問題?

 

人々が引っ越しをすることを考えると、空き家の存在そのものが問題とは言えません。まったく空き家がなければ、みんなで同時に引っ越すか、新築して引っ越すかという選択に迫られてしまいます。したがって、空き家で特に問題となるのは、適切な管理がなされていない空き家です。では、管理水準が低下したり放置されたりした空き家はどのような問題をもたらしうるでしょうか。

 

近隣に放置された空き家があれば、防犯上望ましくないでしょう。不審な人物が入り込んだり、住み着いたりしかねません。建物の倒壊や崩壊、屋根や外壁の落下、失火の恐れなど、防災の観点からも、問題でしょう。また、ごみの不法投棄の現場となってしまえば、衛生上の問題、悪臭の発生、景観の悪化等の問題ももたらしてしまいます。

 

空き家の持ち主としては、タダ(に近い価格)でも手放したい、ということもあるかもしれませんが、買い手としては、建物の解体費用、土地の転用費用等を考えると、空き家そのものをタダで買っても使えるようになるにはそれなりの追加費用がかかります。また、不動産業者の仲介手数料は、売買価格の3%+6万円(+消費税)が標準ですから、仲介業者も費用の方が高くつく、といった問題もあります。引き取り手が見つからなければ、できる範囲内で管理して、当面はそのままにしておかざるを得ないことも多いですね。

 

 

数字で見る空き家の現状

 

では空き家の現状について、統計データを見てみましょう。公的なものとしては、5年に1度実施される「住宅・土地統計調査」があります。最新の平成30(2018)年の調査結果が総務省から公表されています。

 

 

空き家の戸数と空き家率の推移

出典:総務省統計局「住宅・土地統計調査」

 

グラフの読み方ですが、横軸は調査年です。棒グラフは空き家の戸数(単位:万戸)を表しています。左の縦軸で見てください。2008年から2013年の伸びに比べると、やや鈍化した印象はありますが、引き続き空き家が増加し続けていることが分かります。

 

折れ線グラフは、全体の住戸に空き家が占める割合、つまり空き家率を表しています。こちらは右の縦軸でみてください。こちらも伸び率はやや鈍化したように見えますが、13.6%の住宅が空き家になっています。13.6%ということは、およそ7軒に1軒は空き家ということになります。そう考えると、なかなかに深刻なことがより一層浮き彫りになりますね。

 

 

世帯数と住宅ストックの推移

出典:総務省統計局「住宅・土地統計調査」

 

次に、住宅の総戸数と世帯数の推移を同じ「住宅・土地統計調査」で見てみましょう。先ほどと同様、横軸は調査年です。

 

棒グラフの右は住宅の総戸数の推移を表しています。人口減少下にもかかわらず住宅のストックは増え続けていることがわかります。世帯数は左の棒グラフで表していますが、こちらも増加し続けています。一世帯当たり住宅戸数(折れ線グラフ)が増加していることからもわかるように、住宅のストックの増加の方が、世帯数の増加よりも大きいことになります。空き家が増え続けている原因の1つがここにありそうです。

 

 

空き家の種類

 

先にも述べたように、空き家問題が深刻とはいえ、空き家が全くないのも問題ですね。これから家を探そう、という方は新築以外選択肢が無くなってしまいます。住宅土地統計調査の「空き家」の数値をもう少し詳しく見てみると、以下のようになっています(単位は千戸)。

 

総数 賃貸用の住宅 売却用の住宅 二次的住宅 その他の住宅
2013年 8,196 4,292 308 412 3,184
2018年 8,489 4,327 293 381 3,487
変化 +293 +35 -15 -31 +304

出典:総務省統計局「住宅・土地統計調査」

 

表の「二次的住宅」は別荘等を表しています。賃貸や売却を本気で考えていたらきちんと管理するでしょうから、問題となる管理されていない空き家は、空き家総数の全てではないと予想されます。令和元年「空き家所有者実態調査」によれば、腐朽や破損のある住宅は空き家の5割強です。センセーショナルな数字が報じられがちですが、冷静にデータを眺めることも必要そうです。

 

 

空き家問題の地域差

 

少子高齢化、人口の減少と都市への集中等を考えると、空き家問題には地域差があり、特に地方部で問題がより深刻なように思われます。この点についてデータで確かめてみましょう。

 

空き家の「率」が高いのは以下の都道府県になっています。数値の出所は「住宅・土地統計調査」です。

 

  1. 1. 山梨県  21.3%
  2. 2. 和歌山県 20.3%
  3. 3. 長野県  19.5%
  4. 4. 徳島県  19.4%
  5. 5. 高知県  18.9%

 

これらの県では、5軒に1軒が空き家という、にわかには信じ難いような値になっています。一方、空き家率の低い都道府県は以下のようになっています。

 

  1. 1. 埼玉県  10.2%
  2. 1. 沖縄県  10.2%
  3. 3. 東京都  10.6%
  4. 4. 神奈川県 10.7%
  5. 5. 愛知県  11.2%

 

これを見ると、やはり都市部よりも地方部において空き家問題がより深刻なように見えます。では、空き家の「戸数」が多いのはどの都道府県でしょうか?

 

  1. 1. 東京都  81万戸
  2. 2. 大阪府  71万戸
  3. 3. 神奈川県 48万戸
  4. 4. 愛知県  39万戸
  5. 5. 千葉県  38万戸

 

人口の多い都道府県ランキングとほとんど同じですね。都市部においても空き家問題は深刻であり、地域の特徴を踏まえた対策が必要であると考えられます。

 

 

執筆者:藤原徹

 

 

関連記事