今回の内容について動画でも解説しております。併せてご覧ください。↓  

【くらしの中の経済学】日本の経済活動を俯瞰してみよう

 

日本のGDP

 
みなさんこんにちは。「くらしの中の経済学」、今日は日本の経済活動を数値で俯瞰してみたいと思います。 一国の経済活動の規模の指標として、国内総生産(GDP, Gross Domestic Product)という言葉を耳にしたことがある方も多いかと思います。GDPとは、「一定期間にある国の国内で生産された全ての付加価値を市場価格で評価した合計」のことをいいます。日本のGDPが大きくなっていけば、日本経済は成長していることになります。 では、日本のGDPの大きさはどれくらいでしょうか?世界の中でどういう位置にあるのでしょうか、下の表で確認してみましょう。    

表1 GDPの国際比較(2021年)

出所:世界銀行

    日本の2021年の名目GDP(名目GDPと実質GDPについては、別のコラム「インフレ?どう測る?」もご覧ください)は約5兆ドルに達しています。これはアメリカ(約23兆ドル)、中国(約18兆ドル)に次いで世界3位の規模です。 表2は、購買力平価で換算した2021年の名目GDPの値を表しています。これは、ある時点での為替レートでドルにそろえるのではなく、同一の商品バスケットを購入するのに必要な金額を基準にドルへの換算レートを決めるものです。ごく単純な例で考えますと、ハンバーガーが日本では910円、アメリカでは7ドルで売っていたとしたら、為替レートは1ドル=130円(910円=7ドル)と評価するわけです。表2は世界銀行が算出した値を用いています。
 
 

表2 GDPの国際比較(購買力平価、2021年)

出所:世界銀行

    購買力平価でGDPを評価した場合には、中国が世界1位になります。アメリカ、インド、日本の順になっています。
   

GDPの三面等価

 
  GDPは、国連の定める国際基準(SNA、System of National Accounts)に準拠して計算されています。GDPを含め、経済活動に関するマクロ的な統計が、「国民経済計算」として集計、公表されています。以下の数値は全て内閣府の国民経済計算の公表値を用いています。 GDPは、生産の側面、支出の側面、所得(分配)の側面というように複数の側面から観測することができます。同じものを違う側面から見ていますので、きちんと集計すれば同じ額になります。これをGDPの三面等価といいます。 まずは生産の側面からみていきましょう。  
 

図1 生産面から見たGDP(2021年)

    2021年には、国内で約1035兆円の財・サービスが産み出されました。ただし、この中には中間投入に用いられたものが含まれていますから、重複計算を避けるために、中間投入分を差し引きます。例えば、300円のパンが生産されたとして、その前段階で〇〇円の小麦粉が生産され、パン生産に用いられています。さらに、〇〇円の小麦粉の生産の原材料として△△円の小麦が用いられています。生産額だけを合計すると、小麦分は3回、小麦粉分は2回重複計算されてしまいますね。 統計上の不突合を整理すると、生産面から見た2021年の日本のGDPは約549.4兆円になります。 これを産業別に分解したものが以下の表3になります。 第1次産業、農林水産業のシェアは1%ほどしかありません。第2次産業(鉱業、製造業、建設業)のシェアが1/4強の約26%です。製造業だけを取り出すと、シェアは約1/5、21%程度となっています。今日では第3次産業の割合が圧倒的に大きく、約73%にも上っています。    

表3 日本の産業構造(2021年)

    次に支出面から見てみましょう。生産された財・サービスを購入した側から見ると支出にあたります。  

図2 支出面から見たGDP(2021年)

    図2のように、われわれの消費、民間最終消費支出が約294兆円です。表4に示すシェアでは過半数の約54%となっています(データ入手の都合上、シェアは2021年度のデータ)。政府最終消費支出は約118兆円(義務教育の教科書費等も含まれますので、政府自身が使ったということとは若干意味合いが違います)、約22%のシェアになっています。住宅投資や民間の設備投資、公共投資などの総資本形成には約141兆円(約26%)が支出されました。財・サービスの輸出から輸入を差し引くと、支出面から見たGDPが約549.4兆円になり、生産面から見たGDPと等しくなっています。
 
 

表4 日本の支出構造(2021年度)

    産み出された成果物は必ず誰かのものになるはずです。最後に、GDPを所得面からみてみましょう。  
 

図3 所得面から見たGDP(2021年)

    企業、個人企業の利益に相当する営業余剰・混合所得が約77兆円、雇用者報酬(賃金)が約289兆円、ネットでの間接税額である「生産・輸入品に課される税金-補助金」が約47兆円、建物や機械設備等の摩耗・劣化分である固定資本減耗が約139兆円となっています。この合計は生産面から見たGDPで計算した付加価値の合計に等しく、統計上の不突合を整理すると所得面から見たGDPが約549.4兆円となり、生産面、支出面から見たGDPと等しくなっています。 付加価値の行き先をもう少し詳しくみてみます。税・補助金と固定資本減耗を除外して考えます。また、海外からの所得(受け取り利子など)を加算します(これを「要素費用表示の国民所得」といいます)。この方式で計算した経済活動の成果物の分配シェアが表5のようになります(この値もデータ入手の都合上、2021年度のものです)。
 
 

表5 日本の分配構造(2021年度)

    我々労働者の賃金(雇用者報酬)が約3/4の約73%となっています。これに対して企業所得は約20%です。利子や配当などの財産所得は約7%です。 いかがでしたでしょうか。日本の経済活動の姿かたちがすこしイメージできたでしょうか。金額が大きすぎて想像しづらいですが… 「くらしの中の経済学」、今日は日本の経済活動を数値で俯瞰してみました。またお目にかかりましょう。    

執筆者:藤原徹